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283 :隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM:2007/08/14(火) 05 25 12 恐ろしい目に遭った結果だろう、寝転がって見る映画はまったく怖くなかった。 映画はホラーであったし、平常の状態で見れば相当に怖い代物だったのは分かる。 ただ、怖いとかそう言う感覚が一時的に麻痺しているだけで、理性でこれは怖いんだなあと言うことが理解できた。 ストーリーそのものはホラー物ではよくあるシチュエーションだ。 何人かの人々が『この世の物ではない存在』を見てしまい精神だけでなく肉体も変貌を遂げてしまい、変貌した人は他人へと襲いかかるようになる。 襲われた者は同じく変貌を遂げて他人へ襲いかかる。 残された人々は逃亡しながら対抗手段を模索し、生存するための戦いを続ける。 要してしまえばそんなストーリーであった。 だがその『見せ方』が他よりも一歩も二歩も秀でていた。 例えば敵役として存在する変貌した人々。 ゾンビのようになる者は極めて少数で、むしろ変貌の大多数を占めるモザイクを掛けられたかのように波打つその姿はひたすら感情を不安定にさせる。 『それ』に襲われた人々は、その瞬間、表情に恐怖が浮かぶことなく、恍惚とした表情のまま変貌していく。 その様子は直接的な表情や絶叫よりも恐怖を煽る。 そして何より音が危ない。 主人公達の足音や呼吸音だけでなく、誘うように囁く声が耳に残り、そして次の瞬間にはまた新たな囁きが聞こえてくるのだ。 映画の中盤以降、人々が変貌を始めた頃からずっと囁き声を聞かされ続けるのだ、耳元でやられてみれば分かるが大半の人間が恐怖を覚える。 そんな映画を目を輝かせて見入っているのはノインくらいで、ホントにホラー物に慣れ親しんでいるのだと分かる。 他の面々は似たり寄ったりで、肝の太そうな遠坂や蒔寺、それどころかライダーまで見入ると同時に腰が引けている。 三枝さんやホリィに至っては涙目で抱き合っている……うん、やっぱり怖いんだよな、コレ。 怒りを感じていた全員が既に一度怒りを発散しているので映画に集中できている、もしくはしてしまっているというのもあるだろうが、 映画そのものもかなり怖いのだ。 ……まあ一番怖かったのは後ろの方で笑顔のまま怒っていたなのはだったんだけど。 軽く目を閉じて自身の状態を確認する為、機械の中身を覗くように全身に魔力を巡らせる。 ……外側は結構傷だらけになっているが中身は完全に無事、問題はない。 いや、この段階で問題ありならそれこそ問題アリなんだが。 単純な殴打だのキックだので内臓とか魔術回路にダメージがあるほどだったら、それこそ殺す気満々だったと言うことになってしまうしな。 「先輩、大丈夫ですか? その……頭とか」 話しかけるタイミングを計っていたのか、主人公達が窮地を脱し、みんなが安堵の息をついたタイミングで桜が小声で聞いてきた。 頭を殴られたりしたからであって奇っ怪なポーズをしているとかではない、断じて。 「ああ、大丈夫だ、問題はない」 小声で囁き返す。 「その、ごめんなさい……私がキスして、なんて言ったから」 桜の口に軽く指で触れ、言葉を止める。 「いや、俺がキスしたかったからだから、気にすることはないぞ」 少なくとも、突然唇を奪ったのはしたかったから、というのが理由だし。 「でも……」 桜が俯いて黙ってしまう。 かつての自責の念によるところもあるのだろう。 ちょっとしたことで責任を感じ沈んでしまうという気質は、もうちょっと是正した方が良いとは思うのだが。 「それじゃあ――」 桃:「今度は桜からしてくれるか?」 梅:「膝枕、してくれるか?」畳の床は寝転がるには微妙に固いのだ 竹:「とりあえず救急箱を持ってきてくれるか?」消毒くらいしておかないとね
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Who is in the center it is chaos? ◆GOn9rNo1ts 犯罪係数 92 シンデレラガール、渋谷凜の朝は早い。 輝かしい偶像(アイドル)の頂点に立つ彼女の一日は、いたって地味な朝のランニングから始まる。 服装は動きやすさを重視したジャージ。公道を走るのに煌びやかなドレスは必要ない。 傍らには小鼠の変わりに飼い犬であるハナコ。手には彼女が粗相をした際に処理をするための手提げ袋。 かぼちゃの馬車のお出迎えもなく、向かうお城も、今はなく。ただただ体を動かすために。 その日も、凜は自分の足で静かに、しかし確かな足取りで、トレーニングと犬の散歩を兼ねた『毎日』を開始した。 いつからこの日課を始めたのか、凜は覚えていない。 ダンスのレッスンで体力不足を感じた時からだっただろうか。 デビューシングル曲が決まった時だっただろうか。 ライブへの出演が決まった時だろうか。それとも、はじめて総選挙の順位が発表された時だろうか。 分からない。 ただ、何か特別なことがあって、始めたのだろうなとは思う。 不足を感じたのか、向上を願ったのか。新たな階段を、登りたくなった。 いずれにせよ、この地道な一歩一歩が今の渋谷凜を、アイドルとしての渋谷凜を確立させていることは、疑いようのない事実だ。 最初は『特別』で始まったことが、今や日課と化すほどに『当たり前』となっていて。 例え、ほとんどすべてが偽物の街に放り込まれたとしても。 例え、誰かと殺し合いをしなければならないと知らされたとしても。 例え、得体のしれないおっさんと四六時中一緒にいなければならない日々に暗鬱を抱えても。 この当たり前を続けていることで、彼女は浮足立ちそうな現実に足をつけ、息が詰まりそうな空気にほ、っと一息をついている。 そんな気がした。 思えば、この世界を生き抜くためには無意味なレッスンに行き続けているのも『彼女』に会って『当たり前』を手にしたいから、なのかもしれない。 「おはようございます」 ともかく。 現実から逃避したいがための。 もしくは――現実にしがみ付きたいがための。 彼女の『当たり前』は。 かつて『特別』が始まったこの道で。 今回もまた、終わりを告げた。 「お会いできて光栄です、シンデレラガール」 彼は、黒のスーツを纏っていた。 「いえ、今はこう呼ばせていただきましょう」 彼は、三白眼だった。 「聖杯戦争参加者、渋谷凜さん」 彼は、突然に『特別』を与えに来た。 「貴女に、運営からの通達があります」 彼は、名刺の変わりに拳銃のようなものを凜に向けていた。 「……場所、移しても良い?」 これ以上、この『特別』が自分の『当たり前』を浸食していくのが厭で。 これ以上、彼女をシンデレラに変えてくれた『彼』との出会いを塗り潰されたくなくて。 凜は苦々しい顔を隠そうともせず、そう言った。 ◇ ◇ ◇ 「いやあ、助かりました。通常は封筒を郵送させていただくのですが、渋谷さんの場合はお家の方に先に開けられてしまう可能性もありましたので」 銃口を向けた無礼への謝罪を聞き続けながら辿り着いた公園で、彼――東金と名乗った男は開口一番そう言った。 「それにしても矢張りといいますか、全アイドルの頂点ともなるとこんな朝早くからトレーニングに励むものなのですなあ。 まだ年若いにも関わらず大人顔負けのプロ精神。感服するばかりですよ」 「それで、なに」 世辞など聞き飽きていると言わんばかりの必要最低限な反応。 もしくは、シンデレラへの階段を登り続けてきた中で自然と身に着けた「警戒すべき相手への対処法」とでもいうべきか。 そんなぶっきらぼうさに怯むこともなく、彼女より干支一周分は大人な男は言葉を続ける。 「わかりました。早速本題に入らせていただきます。 本日、聖杯戦争運営側から聖杯戦争参加者の皆さんへ討伐クエストが発令されました。 バーサーカー・ギーグ及びそのマスターであるジョーカーの討伐です」 「討伐?」 「詳しくはこちらをどうぞ」 眉をひそめる凜を尻目に、東金は手際よく封筒をポケットから取り出した。 どこにでもある普通の封筒だった。「聖杯戦争参加者の皆様へ」なんて文言が冗談のようにさえ感じられる。 早速封を切り、軽く目を通し始めた凜。 あくまでも冷静に、平静を保ちながら読み進めていく。 そんな彼女の見えないところで、東金の顔が悪鬼のように醜く歪んだ。 「やつらは聖杯戦争をする気がない」 凜の身体がほんの数ミリ揺れ、表情が一瞬強張った。 舐め回すように凜を観察していた東金は、あえて何も反応しなかった。 「やつらはクズだ。生きている価値のない、人以下のゴミクズだ。 信じられますか、渋谷さん。やつらは強盗にも、殺人にも、強姦にも、何一つ意味をもっていないんです」 意味もなく、犯罪を犯し続ける。 それがジョーカー。生粋の狂人。 罰を受けるべき罪人。 「そんな無秩序極まりない存在は、消さねばならない。 聖杯戦争に臨む覚悟もなく、自分のしたいことだけをして生き続ける。 決して許される存在ではない。そうは思いませんか、渋谷さん」 「……だからって、よってたかって殺す、ってのはどうなのかな」 「聖杯戦争のために生まれたこの世界における罪とは、何だと思いますか、渋谷さん?」 凜は、答えられなかった。 東金の目から逃れるように、手紙を読み続けるふりをして、ただひたすら目を動かした。 ただ、この時間が早く終わらないかと。等身大の、女の子のように。 東金は、楽しそうにそれを見つめていた。 「可愛いわんちゃんですね。私もよく、小さい頃に子犬と戯れたものです」 東金の腕がハナコの頭へと伸びていく。凜は、はっと顔を上げる。 何故か、意味もなく唾をのんだ。 頭を撫でる。ただそれだけの行為のはずなのに。 なんだか酷く、暴力的な気配を感じているように。 ハナコは尻尾を振らなかった。 代わりに大きく、欠伸をした。 ぱさり。 「おっと」 小型犬に手を伸ばそうとしゃがんだ拍子に、東金の内ポケットから一枚の写真が落ちる。 凜は見た。 東金とハナコから目を離せなかった結果。 見てしまった。 写真に写っていたのは、一見、何か分からない『物体』 奇抜な飾り付けをされた奇妙なオブジェ。 かの高名な芸術家の前衛的な作品ですと美術館で紹介されれば、信じてしまうかもしれない。 但し、それが公共の場では芸術作品足りえない理由がある。 その『物体』のちょうどてっぺんに。 『顔』が乗っていた。 明るい栗色の髪に、凜は見覚えがあった。 オブジェを飾りたてる襤褸切れの暖かい色合いに、凜は見覚えがあった。 オブジェの足元に何故かきちんと両揃えで置かれている、ぴかぴかに磨かれたスニーカーに、凜は見覚えがあった。 それは それは 「失礼しました。忘れてください」 今、自分がどんな顔をしているのか、凜は分からなかった。 決して鏡で見たくないような、そんなアイドルらしからぬ顔だろうとは、想像がついた。 「……痛ましい事件でした。被害者は誰にでも好かれる、学園のアイドルだったそうです。 このような悲劇を一日でも早く終わらせるために、ジョーカーは倒さなければなりません」 ハナコが、また大きく欠伸をする。 凜は力が抜けたようにしゃがみ込み、震える手でハナコを抱き寄せる。 大丈夫、大丈夫、と。言い聞かせるように呟いた。 「貴女がどのような決断をするか、それは私の預かり知らぬところです。 ですが、少なくともご家族や友人やアイドル仲間の皆さんには、それとなく夜分の外出を止めるように勧めたほうが良いでしょう」 『彼女』は、最近ずっと遅くまでレッスンに励んでいるようだった。 『彼女』の家は、凜の家よりもレッスン場から遠いところにあった気がする。 凜はいつもレッスンの帰りに、『彼女』と凜の家の前で別れていた。 「最も、ジョーカーは他人の家へ当たり前のように侵入し一家惨殺を行っています。 サーヴァントを持たぬ人間にとっては、この世界で安全なところなどないのでしょうがね」 サーヴァント。超常の存在。凜が持つ、武器にして防具。 その力を行使すれば、ジョーカーを前にしても身を守ることができるだろう。 だけど『彼女』は? 「ああ、一つ言い忘れていました」 ひたり、と。 東金が、凜の前に一歩を踏み出す。 最後の一押しを、押すように。 「ジョーカーを殺した場合でも、貴女が殺人犯として捕まることはありません。 流石に、英雄として祭り上げられることはないでしょうが……討伐依頼書に記載の通り、報酬も御座います。 少なくとも、新聞一面に『シンデレラガールの知られざる一面!』なんてことはありえません。そのために我々運営がいます」 我々は、世界は、貴女の味方です、渋谷凜さん。 ジョーカーは悪で、貴女は正義だ。 人殺しの化け物を打倒し、大切なものを守る、正義の味方だ。 そんな毒が、零れ落ちていく温かい思い出に代わって、凜へ流し込まれていく。 「それでは、貴重なお時間をありがとうございました」 「…………」 お互いに、話すことはもう何もなかった。 凜は、胸に抱えたハナコの温かさを感じながら、走る。 悲鳴を上げかけているような顔で。今にも泣き出しそうな顔で。 それでもきっと、彼女は何事もなかったかのように家に着き家族に会い、何事もなかったかのように学校へ向かい友人たちと談笑するのだろう。 それぐらいは出来る演技力を、シンデレラガールは身につけてしまっていた。 だけど、それでも。 渋谷凜は『彼女』の――島村卯月の、太陽のような笑顔に一刻も早く会いたかった。 「頑張って下さい」 その言葉は、渋谷凜に届かなかった。 犯罪係数 64 ◇ ◇ ◇ 執行対象ではありません、トリガーをロックします 「なかなかに手強いですな」 東金朔夜は渋谷凜の姿が完全に見えなくなったことを確認してから、己の手に握られた拳銃に声をかけた。 「何度か挑発も行ったのですが……反応さえありません」 「マスターを守る気がないのか、守れるという絶対の自信があるのか」 「それとも、こちらの意図を読んでいるのか」 懸念事項、対象が解析系スキルもしくは宝具を持っていた場合、当騎の宝具を視認された可能性は今後に悪影響を与えかねません 「その点においては申し開きのしようも御座いません」 「軽率な判断でした。ただ」 「彼女の、シンデレラガールの今の色を見ておきたかったものですから」 ……………… 「なに、御心配には及びません。マスターである渋谷凜は聖杯戦争へと臨む覚悟を決めたようですし」 「いずれ、サーヴァントの方も尻尾を出さざるを得ません」 東金執行官は引き続き任務に励んで下さい 「お任せください。全ては、シビュラによる完全統治のために」 ◇ ◇ ◇ 知っている顔 知らない貌 うた 東金朔夜 シビュラシステム 知っている顔 知らない貌 Who are you ? 貴女は シンデレラ ガール 誰もが羨む ヒロイン 全国民の 知っている顔 そしてお前は 従者 誰もが知らない 怪物 名前も分からぬ 知らない貌 光に 紛・れ・て 闇は静かに ひ・そ・む 俺ら 全てを 支配しなくちゃ 気が済まねえ DOMINATE! 知っている顔 知らない貌 お前たちは 秩序? 混沌? 善か? 悪か? 知りたいのさ Sibyl System 深刻なエラーが発生しました 深刻なエラーが発生しました 深刻なエラーが発生しました 当システムのエラーを確認しました エラーを引き起こしたバグへの対処を最優先で行います 汚染箇所を確認します 汚染範囲を測定します 汚染強度、狂 対処法を協議します しばらくお待ちください 協議の結果、汚染範囲を廃棄することに決定しました 当騎における0.76%を廃棄します バグの侵入経路を推測します ケーブルから侵入の可能性、大 汚染範囲における電力供給ケーブルを切除します 調査の結果、該当ケーブルは千代田区の余剰電力を供給していたものと判明しました 対象地区の警戒度をD→Bに上昇させます また、当騎の精神障壁を突破したことから対象バグの危険性を暫定的にAランクに認定します 監視官及び執行官の維持、問題ありません 禾生壌宗との同調、問題ありません 聖杯との接続、問題ありません ムーンセル及び東京との連絡、問題ありません 全機能の復旧、並びに正常動作を確認しました 当騎の完全性は、保たれています 引き続きルーラーとしてご利用の程、宜しくお願い致します ◇ ◇ ◇ 姫は騎士へと歩を進め。 狗はエモノを鋭く見つめ。 王はUTSUWAに毒される。 …………フフフ 復讐。義憤。愛情。正義。 大義名分の名のもとに。 闇へその身を沈ませる。 そして、この小話の語り部たる 私 は。 ハハハハハハハハハハハハ! ■■■■■■■■は、彼ら全てを高みから嘲う。 【A-4/渋谷/1日目 早朝】 【渋谷凜@アイドルマスター シンデレラガールズ】 [状態] 精神的に少し不安定。犯罪係数64 [令呪]残り3画 [装備] 手持ちバッグ(散歩グッズ入り) ハナコ [道具] なし [所持金] 手持ちは高校生のおこづかい程度。 [思考・状況] 基本行動方針: 私は…… 1. 今はただ、島村卯月に会いたい。 2. ジョーカーを……? [備考] ※ジョーカー討伐クエストの詳細を把握しました。 ※ジョーカー&バーサーカー組の情報を把握しました。 【ランサー(アドルフ・ヒトラー)@ペルソナ2罪】 [状態] 健康。 [装備] ロンギヌス [道具] なし [所持金] なし [思考・状況] 基本行動方針:愉しむ。 1.愉しい。 [備考] ※ジョーカー討伐クエストの詳細を把握しました。 ※ジョーカー&バーサーカー組の情報を把握しました。 ※ 検閲済み 007 一人×2 投下順 009 誓いの爪痕 006 俺たちは闇から光を見ている 時系列順 011 誰も知らないあなたの仮面 BACK 登場キャラ NEXT 000 DAY BEFORE:闇夜が連れてきた運命 渋谷凛&ランサー(アドルフ・ヒトラー) 015 禍々しくも聖なるかな
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いくつもの不運と幸運を重ねて 時は待たない。 全ての者に平等に結末を運んでくる。 電子世界の冬木市に僅かに陽の光が差しはじめた頃、枢木スザクは小鳥の囀りで目を覚ました。 「……夜が明けてきたのか。 本当に現実と変わらない世界なんだな、ここは」 大して疲労の抜けていない身体を起こし、スザクは先ほど潜り込んだこの家を物色し始めた。 本来ならもっと睡眠を摂るべきなのだが、昨夜の激戦のせいかはたまたバーサーカーへの魔力供給のせいか、強い空腹感に苛まれていた。 それに一度目が覚めてしまったせいか、腹を満たしたとしてもすぐには眠れそうにもなかった。 そこでまずは食糧を探すことにした。 食糧はすぐに見つかった。 何しろここは普通の民家、台所を探せば食べ物が見つかるのは当たり前の道理だった。 スザクはいくつかの菓子パンとバナナ、そして牛乳を選び取ると自分でも驚くほどのスピードでそれらを貪った。 そうしていくらか空腹を満たした後、今後の戦略を考えることにした。 やはり目下最大の敵は他二人のマスターと共に柳洞寺に立て篭っているルルーシュだ。 ランサーの言によれば柳洞寺は自然のマナが集まる霊脈であり、サーヴァントの回復には最適の場所であるらしい。 おまけに周辺には霊的な結界まであり、正面以外から侵入したサーヴァントは能力値を軒並み低下させられてしまうらしい。 まさに攻めるに難く守るに易い要衝の地。早々にそのような場所に目をつけさらには二人のマスターを抱き込んだルルーシュの手腕は流石と言う他無いだろう。 加えてそこに集うサーヴァントも粒揃いだ。 バーサーカーと同じ円卓の騎士であるガウェイン、そして彼ら円卓を従え十二の会戦に勝利し、かつてのブリテンに繁栄を齎したアーサー王。 また、宝具を無効化する宝具、太極図を備えたライダー。 太極図というありふれた単語だけでは真名を完全に絞り込むことはできないが、ランサーから聞いた中華風の装いと併せて考えれば中華系、それも宝具の性能から察するに神話の人物であることは疑いない。 最後の決め手は鳴上悠がマスターとしての透視能力で見たという軍略のスキル。 これら全てに該当し得る人物は多くはない。 その中で最も知名度と可能性が高い人物と言えば世間では釣り人の代名詞として知られる周の軍師・太公望だろう。 いずれも神話のメジャー級の英傑ばかりであり、まともに戦えば苦戦どころでは済まされない。 「そうだとしても、時間を掛けすぎるわけにはいかないか…」 しかしルルーシュをよく知るスザクは例え拙速と言われても可能な限り早期に柳洞寺を攻めるべきではないかと考えていた。 確かにルルーシュの頭脳とギアスは脅威だ。 だが彼とて無から有を生み出せるわけではないのだ。 故に、ルルーシュが準備を完全なものにする前ならば決して倒せないことはないはずだ。 逆に言えば、時間はスザクにとっての敵でありルルーシュにとっての味方なのだ。 それにサーヴァントの戦力でも大きく劣っているとは思わない。 自身のサーヴァント、ランスロットは言うに及ばず鳴上悠のサーヴァント、クー・フーリンも円卓の騎士に勝るとも劣らぬ大英雄だ。 もう一人の同盟相手である衛宮切嗣のライダーだけがやや未知数な面が強いのがネックといえばネックだが。 「そしてもうひとつ、衛宮切嗣と鳴上悠のどちらを残すか……」 当たり前だが、最終的には優勝を目指す以上柳洞寺攻略後のことも見据えなければならない。 そして衛宮切嗣と鳴上悠の間に(理由はわからないが)因縁がある以上この三者同盟はそう長続きしないだろうことは想像に難くない。 柳洞寺に篭った三組のマスター達という共通の敵がいるからこそ辛うじて成立している同盟であることをスザクは正しく理解していた。 そうである以上、柳洞寺を攻略した後は両者を天秤にかけてどちらかを切り捨てる必要が出てくるだろう。 「…やはり、より危険なのは衛宮切嗣の方だろうな」 スザクが見た限り衛宮切嗣という男からは人殺しのプロ、有り体に言えば暗殺者のような雰囲気が感じられた。踏んだ場数も向こうの方が遥かに上だろう。 先ほどの戦闘とその後の交渉でまんまと出し抜けたのはひとえに戦闘中に乱入し、奇襲をかける事によって多大なアドバンテージを得られたからに他ならない。 幸いバーサーカーは衛宮切嗣のライダーに対しては相性が良いようだが戦闘中のやり取りから察するにライダーにはバーサーカーすら打倒し得る切り札が存在する可能性がある。 何より衛宮切嗣はステータスと宝具が隠蔽されている筈のバーサーカーの能力を何故か以前から知っていた節がある。これは断じて看過して良い問題ではない。 先ほどは鳴上悠の首を献上すると言ったが、あんなものは交渉をスムーズに進めるための方便だ。 あちらもそこまで本気にしてはいないだろう。 対して鳴上悠はマスターとしては反則的なまでに万能かつ強力な術(ペルソナと言うらしい。心理学用語のペルソナと関係があるのだろうか?)を持つ反面、人間同士の殺し合いには慣れていないように見受けられた。 むしろ、どこにでもいる普通の学生と言った方が違和感が無いぐらいだ。 御しやすさという点で言えば衛宮切嗣よりもずっと楽な相手だといえる。 事実先ほどは生殺与奪を握っていたとはいえあっさりとこちらの望む条件を呑ませることができた。 今はペルソナを使えなくなっているようだが、当面戦力的にはランサー(魔力供給の途絶は一時的なものだったらしい)が加わるだけでも十分だ。 むしろ最終的には死んでもらうことを考えればずっとペルソナを使えないままで良いとすら思っている。 何よりも彼らは令呪で丸二日間こちらに攻撃できない状態にある。これを活かさない手はない。 「決まりだな。衛宮切嗣には早々に消えてもらった方が良い」 呟きながら今後の方針を固めていく。 体力が回復次第柳洞寺に攻め入る。最優先目標はルルーシュの殺害とバーサーカーの足の傷の治癒だ。 そしてその段階で上手くライダーを消耗させ、鳴上悠と共謀して衛宮切嗣を葬る。 彼からすれば衛宮切嗣は相性の悪い相手だ。謀殺を提案すれば喜んで乗ってくることだろう。 その後は令呪の効果が切れるまでは鳴上悠との同盟を維持する。 大雑把だがこんなところで当座は問題ないだろう。 戦場では何が起こるかわからない以上、細かい部分は臨機応変に対応せざるを得ないだろうがそれは仕方ない。 頭の中で今描いたシナリオを反芻しつつ、再びスザクは休息しようとしていた。 だが、彼はもう少しだけ慎重になるべきだったのかもしれない。 聖杯戦争を勝ち抜くためのシナリオを描いているのは何もスザクだけではないのだから。 「っ!?」 突如、地震のような揺れと大気が震えるような感覚に襲われた。 何が起こったのか確認しようと外に出ようとした瞬間、凄まじいまでの轟音とともに玄関が破壊され、大量の破片やガレキがスザクを襲った。 「……?」 だが、予想に反してスザク自身には何の痛みも衝撃もやって来ることはなかった。 実体化したバーサーカーがその身と支配下に置いたドラグブラッカーを盾にしてスザクを守ったのだ。 その動きはただの理性を失った獣では有り得ない、主君、いや、友を守るための騎士のそれだった。 「…ありがとう、バーサーカー」 感謝の言葉を口にして、前方を睨む。 そこには、自分達を襲撃してきたであろう巨大な馬に跨った巨漢の姿があった。 巨漢は馬から降りると宝具だったのであろうそれの実体化を解き、威風堂々と立ちはだかってきた。 そしてその後ろから、マスターと思しき海藻のような頭髪の少年が現れた。 遡ること数時間前、間桐慎二は大いに困惑していた。 「…は?月海原学園?」 自宅で羽瀬川小鳩との“お楽しみ”に時間を費やした後、ライダーとキャスターを引き連れて獲物を探しに夜の深山町に繰り出した彼が遠目に見たのは普段通っている穂群原学園とは似て非なる形の校舎だった。 何事かと思い立ち寄ってみると、そこには穂群原学園は影も形もなく、代わりに月海原学園なる学校があった。 「な、何なんだよこれ?」 例え聖杯戦争だとしてもあまりに予想外すぎる事態にしばらく立ち尽くしていたが、意を決して中に入っていった。 サーヴァントを二騎従えているという事実が慎二を強気にしていたのだ。 何故か開かれていた校門から中に入ると荒らされたグラウンドと窓ガラスが割れ、外壁のあちこちが削られた校舎が見えた。 既に新たな聖杯戦争が始まっていることを改めて実感する光景だった。 そして驚くべきことに校舎に入ると数人の生徒らしき者がいた。 「おい、そこの奴!ここは本当は穂群原学園なんだ。 どこの魔術師だか知らないけどこの冬木でちょっと勝手が過ぎるんじゃないか?」 慎二が八つ当たりの対象に選んだのは休憩時間を利用して購買にお菓子を買いに行っていた図書室受付の間目智識だった。 彼女はどこか困ったような調子で慎二にとって信じ難い事実を口にした。 「君、確か間桐慎二君だよね? えーっと、すごく言いにくいんだけどここって地上の冬木市じゃなくてムーンセルで再現したバーチャルな冬木市なんだよね」 「は?なんだよそれ。 いい加減なこと言って誤魔化そうとしてるんじゃないだろうな?」 「いや、嘘なんかついてないから! だって君、地上の聖杯戦争で一度殺されたのにちゃんとこうしていられてるでしょ?」 「っ!?な、何だよお前、何でそんなこと知ってるんだよ!? ~~~!!くそっ、わかったよ、いいからまずは説明してみろよ! 嘘をついてたら、ライダーとキャスターにこの学校ごとぶっ壊させるからな!!」 聖杯戦争の当事者でもない限り知り得ない事実を知っている事に加え、自分がここで生きている理由を知っていそうなこの少女をすぐに殺すのは不味い。 そう考えた慎二は持てる理性を総動員して癇癪を抑え、話しを聞くことにした。 実のところ彼も死んだ筈の自分が生きている理由が気になってはいた。 死人を完全に生き返らせるなどそれこそ魔法の領域だ。 それにこの場所に来るまでにも(意図的に無視していたが)小さな違和感はいくつもあった。 如何にサーヴァントを従えていたとはいえ無断で魔術師の工房に侵入した非力な小娘相手に何もせず、姿も見せなかった祖父・間桐臓硯。 同じく所在の知れない義妹・間桐桜。 さらに蟲の一匹もいない異様な蟲倉。 それらの事実が慎二に辛うじて冷静さを保たせたのだ。 「……とまあ、大体こんなところかな?」 間目智識は語った。 ムーンセルの成り立ちやその機能、参加者に話しても問題ない範囲でのこの聖杯戦争の詳細なルールや性質などを。 「じ、じゃあ何か? 今ここにいる僕はただの再現されたデータだっていうのか?」 世間で言うところの遊び人である慎二は他の魔術師と違い、ある程度は機械やPCへの知識と理解があった。 だからこそムーンセルに関する説明も理解はできたのだが、それは別の困惑を生んだ。 人間一人のデータを丸ごと再現するなど尋常な事ではない。それこそ聖杯でもなければ到底成し得ないことだ。 いや、それを言えば街ひとつをそのまま再現するのもそれ以上の超越的な技術なのだが今の慎二にそこまで気を回す余裕はなかった。 「事実だけを言えばそうなっちゃうね。 でもそれは他のどのマスターも同じだよ。 現実世界に肉体があるか無いかっていう違いはあるけどね」 「……!!おい、ライダー!! そんな大事な事を何で僕に黙ってた!?」 怒鳴りつけた慎二の横に憮然とした表情のライダーが実体化した。 「貴様とて聞こうとはしなかっただろう。 経験者の貴様の意を汲んだまでよ」 その言葉には明らかに先ほど令呪を使われた事に対する意趣返しの念が含まれていた。 だが慎二はそんなことなど棚に上げて苛立ちを募らせていく。 「この大馬鹿野郎!! マスターにこんな基本的な事も伝えないサーヴァントがあるか!! お前本当に勝つ気があるのかよ!?ええっ!? 大したサーヴァント様だよ、まったく!!」 令呪の強制力が働いているのを良いことにこれまでこのサーヴァントにコケにされてきた鬱憤を罵声に変えて晴らしていく。 前回の聖杯戦争で自身の(正確には桜の)サーヴァントの忠告を全く聞き入れなかった彼がこんなことを言う資格はないのだが、今この場に限っては正論であるともいえた。 慎二の口が更なる罵声を紡ぎ出そうとしたその瞬間、それはやってきた。 まるで昼夜が逆転したかのような強烈な閃光と何かがぶつかり合ったような轟音、そして学園内の全ての窓ガラスを割るほどの凄まじい地震と衝撃波が襲いかかってきたのだ。 ライダーが渋々身体を張って盾になったため傷こそ無かったが衝撃によって慎二は無様にも床に寝転がる羽目になった。 「な、何だ今のは…。 そ、そうだ、あれはまるであの時の……」 そんな慎二の脳裏に浮かんだのはまだ真新しい記憶。 自らのサーヴァント・メドゥーサが敵サーヴァントの放った宝具の光の奔流の中に消えていった敗戦の瞬間だった。 それを漸く思い出した慎二の身体から急速に血の気が引いていった。 そう、いくら今回の自分のサーヴァント・ライダーのスペックが優れていようとあれほどの宝具を使われては耐えられるはずがない。 キャスターを屈服させた程度で自分は一体何を調子に乗っていたのだろうか。 (か、勝てるのか…?生き延びられるのか、僕は……?) ここに来て初めて強い不安に駆られた慎二に更なる追い討ちが待っていた。 「あ、新しい脱落者の名前が出たみたい」 同じく咄嗟にライダーの後ろに隠れて難を逃れた間目智識の言葉で掲示板(今まで気がつかなかった)の方を向いた慎二の視界に信じ難い名前が映った。 脱落者 天野雪輝 我妻由乃 イリヤスフィール・フォン・アインツベルン 正直に言って上の二人の有象無象のマスターはどうでもいい。 慎二の目を引いたのは三番目の名前、始まりの御三家の一角にして自分を一度殺したあの強力無比なバーサーカーのマスター、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンだった。 「そ、そんな馬鹿な…。 始まってからまだ半日だって経っちゃいないんだぞ。 なのにアインツベルンが、あのバーサーカーのマスターがこんなにあっさり…?」 その事実は慎二の中の死への恐怖を再燃させるには充分すぎた。 あのマスターを殺したのが今さっき炸裂した宝具であったならばまだ良い。 だがもしもそれ以外のまだ見ぬサーヴァントの手によるものだったとしたらどうする。 イリヤスフィールの名前しか追加されなかったということはそいつを倒したマスターとサーヴァントは未だ健在ということだ。 そんな危険な連中を向こうに回してどうして生き残れるというのか。 「や、やっぱり僕は死ぬんだ…。 もう駄目だ、おしまいだぁ……」 その場に蹲って嫌だ、死にたくないとうわ言のように呟きはじめた。 「うろたえるな、小僧!!!!」 そんな慎二にライダーの容赦ない叱責が飛んだ。 不甲斐なさすぎるマスターに苛立ちが頂点に達したライダーの大音声は、結果としては慎二にいくばくかの冷静さを取り戻させた。 「貴様は誰を従えていると思っている!! この拳王を召喚しておきながらそのような無様を晒すなど…恥を知れい!!!」 「な、何だよ…。 何偉そうなこと言ってんだよ。 お前状況わかってんのかよ!? あんな危険な宝具を持ってる連中と戦って勝ち抜けると思ってるのかよ!? お前だってたった今見たとこだろ!」 「愚問だ。 甚だ不本意だがこの拳王の名にかけて貴様を聖杯の頂きまで連れていってやろう」 有無を言わさぬ断固とした口調で告げるライダーに慎二は不覚にも多少の頼もしさを覚えた。 彼の前のサーヴァントは従順ではあったが勝利を約束することはしなかった。 否、勝利そのものに対して執着が無いようにも見えた。 だからこそ、憚ることもなく勝利を断言するこのサーヴァントが眩しく映った。 「ライダー、お前……」 ライダーに何かを言おうとしたところでまたしても騒音が響いてきた。 先ほどよりも遠くから聞こえた音に慎二は今度こそ冷静な判断を下すことができた。 「よし、まずは様子を見るぞ、もちろん一番安全な場所からな」 そして時間は現在へ戻る。 突如として敵マスターとサーヴァントの奇襲を受けたスザクは必死で事態を好転させるべく頭を回転させていた。 今の自分達は激戦を越えたばかりであり、はっきり言ってまともに戦える状態ではない。 となれば取り得る手段は一つしか有り得ない。 「待ってくれ!」 「何だよ?命乞いか?」 妙に自信満々な相手の様子を怪訝に思いながらもスザクは言葉を紡いでいく。 ここで戦うわけにはいかないのだ。 「そうじゃない、君は知らないかもしれないがこの聖杯戦争は単独で戦い抜けるほど甘いものじゃない。 現に今柳洞寺には三組のマスターが籠城しているし、僕自身も二人のマスターと同盟を結んでいる。 ここで僕らが潰し合うのはどう考えても得策じゃない。 むしろ、ここは一時でも手を組んで柳洞寺を攻めて後顧の憂いを絶つべきだ」 提供しても構わない情報を小出しにしつつ交渉を試みる。 柳洞寺にいるマスター達の存在を考えれば衛宮切嗣や鳴上悠もここでスザクが脱落することを望まないはずだ。 この交渉が上手くいかなくても彼らが救援に来るまでの時間を稼げば良い。 あの二人、特に衛宮切嗣に対しては弱みを見せたくはないが背に腹は代えられない。 「へえ、それは確かに人手が要りそうだ。 手を組む必要もあるかもね。 その上で聞くけど、僕とお前が対等な関係である必要がどこにあるわけ?」 だが、相手のマスターはまるで耳を貸す様子がない。 こちらの言うことを信じていないわけではないようだが、だとすればこの不可解なまでの自信は何なのだろうか。 考えを巡らせる暇も与えぬとばかりに海藻頭の少年はサーヴァントに顎で合図し、それと同時に敵サーヴァント――恐らくライダー――が凄まじい威圧感を放ちながら突進してきた。 バーサーカーはすかさず黒龍ドラグブラッカーと共にライダーを叩き潰すべく迎撃を試みる。 ランサーや元の持ち主であるライダーをも叩き伏せた黒龍の性能は断じて伊達ではない。 だが、その選択は拳王ラオウに対してはこの上ない愚策と呼ぶ他なかった。 「そのような木偶でこの拳王と対等に戦おうなど…笑止!!」 そう言うやライダーは右掌に魔力、いや、気を溜めていく。 そして、迫るドラグブラッカーに真正面から激烈な気を放った。 「北斗剛掌波!!!」 周囲を揺るがす爆音とともにドラグブラッカーの巨体が大きく揺れた。 騎手であるバーサーカーが必死に制御しようとするも、多大なダメージを受けた黒龍は人間でいうところの棒立ちに近い状態に陥った。 「砕けよ!!」 その隙を見逃さずライダーの剛拳がドラグブラッカーを直撃し、その身体を粉砕した。 拳王ラオウの全身全霊の拳はその一撃一撃が平均的な対人宝具にも匹敵する。 魔力の塵となって消えていく黒龍を他所にバーサーカーはすぐ後ろに着地して難を逃れたが戦力の大幅な低下は免れなかった。 (不味い!!) 今の一連の攻防からスザクは目の前のライダーとバーサーカーが極めて相性が悪いことを痛感した。 あのライダーは武具という武具を用いない、武術でもって戦うサーヴァントだ。 バーサーカーが奪える武器が無いのでは真正面からの戦いを強いられることになる。 しかもこのライダーは相当な実力者だ。 もしもバーサーカーが切り札“無毀なる湖光(アロンダイト)”を使える程度まで回復していたのなら足の傷を考慮しても互角以上の戦いができただろう。 だが現実にはバーサーカーは先ほどの一戦で貯蔵魔力の大半を消耗していた。 無理を押して両腕を修復して衛宮切嗣と鳴上悠らの戦闘に介入したことがここに来て裏目に出た。 さらに、ランサーの“刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)”を防御した時に受けたダメージも未だ癒えていない。 如何に身体の限界を超えて戦えるバーサーカーといえども体力も気力も魔力も尽きた状態でまともな戦いなど出来るわけがない。 スザクのその考えを裏付けるようにバーサーカーはライダー相手に防戦を余儀なくされていた。 その場に転がっていた角材を即席の宝具にして凌いでいるが、ライダーの拳を受ける度に宝具としての神秘を付与された筈のそれが軋みをあげ、バーサーカー自身にも確実にダメージが蓄積していった。 このままでは決壊は時間の問題だ。 (ならば打つ手はひとつだ……!) 「ハハ、ハハハハハハハハ!! 凄い、凄いじゃないかライダー!! 流石は僕のサーヴァントだ!!」 そう、熱に浮かされたように騒いでいるあの少年をスザク自身が仕留めることだ。 見たところ、戦闘の心得があるようには見えない。 (その油断が命取りだよ) 幾度目かもわからないライダーとバーサーカーの激突。 その間隙を縫ってスザクは駆けた。 普通の人間の限界を完全に超越した動きで少年、間桐慎二に迫る。 「ハッ、引っかかったなバーカ!」 猛烈なスピードで突進してくるスザクを嘲笑する少年の背後から何者かが現れスザクを殴りつけ、瞬く間に組み伏せた。 「ぐっ…!ま、まさかそんな……!?」 スザクが驚くのも無理はない。 突然現れたその男は明らかに人間とは異なる気配、即ちサーヴァントとしての気配を纏っていたからだ。 スザクは知らないことだが、そのサーヴァントこそキャスターとして招かれたゾルフ・J・キンブリーだった。 「ハハッ!無様だね。ああ、言っておくけどアテにしてる同盟相手の援軍なら来ないぜ?」 「なっ!?ど、どうして…」 動揺を露わにしたスザクの顔を見た少年は何かの確信を得たかのようにニヤリと笑った。 即座にしまったと気付いたがもう遅い、少年はカマをかけていたのだ。 (迂闊だった…!さっきの戦いは見られていたんだ!) 「大体さあ、ちょっと考えればわかるだろ? これは聖杯戦争だぜ?いくら同盟してるからって競争相手には違いないんだ。 そんな奴のピンチに駆けつけるような物好きがそうそういるわけないだろ。 ましてあんなやり方で介入したんじゃ尚更さ」 得意気に自らの推理を語る少年に返す言葉をスザクは持たなかった。 衛宮切嗣と鳴上悠の思惑は分からないが今もって彼らがスザクを助けに来ていないことはどうしようもない事実だからだ。 「ともあれ勝負ありって奴だ。 おいキャスター、死なない程度に痛めつけてやれ。 そいつとサーヴァントには使い道があるからね」 「…ええ、わかっていますとも」 「……!!」 キャスターはまずスザクの残された右腕をへし折った。 そして両足に手を添えた次の瞬間、スザクの両膝に小型の爆弾が出現した。 「なっ…!?」 その直後スザクの両足は爆ぜ、膝から先の部分が永遠に失われることとなった。 その激痛たるや、スザクの人生においても経験したことのない例えようのないものだった。 「ぁ、ぐああああああああああああああああああぁぁぁっ!!!!」 「あははははは!!こりゃ傑作だ!! さあて、お前に選択肢をやるよ。 ここでキャスターに体中を爆破されて死ぬかサーヴァントを差し出して生き延びるかという素敵な選択肢をね」 「だ、誰、が……!!」 下衆な笑いを浮かべながら見下してくる少年を渾身の力を込めて睨み返す。 例えここで死ぬとしても戦友と認め合った者を売り渡すわけにはいかない。 そう固く心に誓い、歯を食いしばる。 だが、世界がスザクの意思を聞き届ける理由はどこにもない。 いや、それは裏切りに塗れた人生を歩んできた彼への罰だったのかもしれない。 枢木スザクには既に誇りある死を選ぶ事すら許されない。 ――――生きろ (……!?) 突如頭の中に響いた命令(ギアス)。 慎二の提案を拒めば即座に死を免れないこの状況においてその呪いはスザクに最も恥ずべき言葉を選ばせた。 「ああ、わかった」 「へえ、物わかりが良いじゃないか。 ってお前、もう令呪を一画使ってるのかよ。 まあ良いさ、お前はサーヴァントにこう言うんだ」 スザクの赤く染まった瞳に気付かぬまま気を良くした慎二は令呪の使用を促した。 その指示に従って、スザクの口は禁断の言葉を紡ぎ出した。 「間桐慎二及びラオウに命令された事柄を除く一切の行動を永久に禁じる」 その瞬間、戦闘中のバーサーカーの動きがピタリと止まった。 対魔力の低い彼に令呪の強制力に抗う術などありはしないのだ。 見覚えのある光景にライダーは恨みがましい表情で慎二を睨んだ。 「…貴様、またか」 「怒るなよ、これは立派な戦略ってやつさ。 むしろ感謝したって良いんじゃないか? これから先お前が直接戦うに値しない雑魚はみんなキャスターとバーサーカーが片付けてくれるんだからさ」 「…ふん」 「……俺…は…何を……」 慎二とライダーが話し込む中、スザクの心は途方もない絶望に支配されていた。 せっかくバーサーカーと分かり合えた筈だった。 ここから自分たちの聖杯戦争が始まる筈だった。 それなのに聖杯への道をたった今、自ら断ち切ってしまった。 これから先聖杯戦争を勝ち抜くなどもう不可能だ。 これが父を刺し、旧友を皇帝に売り渡した自分への報いだとでもいうのか。 こみ上げる悔し涙を抑えることができなかった。 (何故だ…ルルーシュ、俺はどこで間違えてしまったんだ? もし君ならこんな逆境も覆せたのか……?) 神の視点から言えばこの聖杯戦争でのスザクは常に最善かそれに近い行動を取り続けてきたと言っていい。 当初バーサーカーを単独で行動させた事も並のマスターやサーヴァントが相手であればベストといって差し支えない策だったし、運悪く匂宮出夢に発見されてしまったが聖杯戦争において弱点となるマスターが潜伏するのはむしろ良い判断だった。 それらの策は結果的に裏目に出たが、それでもそのすぐ後に令呪を用いてバーサーカーとの対話を図り、鳴上悠から宝具を奪還したことも些か拙速ではあったが彼らの窮状を鑑みれば限りなくベストに近い判断だった。 無い無い尽くしの中スザクは見事な奮戦を続けていたが、運を味方につけることだけはできなかった。 もしも彼に失策と呼べるものがあったとすれば、先ほどの戦いの後単独で行動してしまったことと、失地を挽回しようと焦るあまり自分達の行動が第三者に見られる可能性がある事を失念していたことにある。 スザクが気付いた通り慎二らは先ほどの戦いを学園の屋上から遠目に観察していた。 以前にサーヴァントを使役した経験のある慎二は英霊が視力においても人間のそれを遥かに超越することを知っていた。 故に屋上という比較的安全な場所からでもある程度は戦闘の様子を窺い知る事ができると判断したのだ。 その判断は功を奏し夜間とはいえ街中で堂々と戦闘に勤しんでいた二人のマスターとスザクらの姿をライダーとキャスターの眼はしっかりと捉えていた。 流石にどのような会話がされていたかを聞き取ることは叶わなかったが突如として戦場に介入し、特撮ヒーローのような姿のサーヴァントの宝具の一部を奪いランサーのマスターを攫い、もう一方のマスターに電話をかけたスザクやバーサーカーの動向から慎二はある結論を導き出した。 即ち、スザクは自らが主導権を持った同盟を築くために戦場に現れ、ランサーのマスターに令呪を使わせランサーの戦力を出汁にして恫喝することでもう一人のマスターとも共闘を持ちかけたのだと。 このように考えればランサーのマスターを殺さなかったスザクらの動きの理由にも説明がつく。 令呪の使用を示す強烈な赤い光が出たことをライダーらがしっかりと見ていたことも慎二に自らの推理を肯定させる材料になった。 そして三組の中からスザクを選んで奇襲を仕掛けたのもいくつかの理由あってのことだ。 一つは単純な位置関係。 スザクらは運悪く慎二らに最も近い位置に移動してしまっていたのだ。 もう一つはスザクら三組の同盟の関係性だ。 慎二は戦闘に介入して引っかき回した挙句片方のサーヴァントの宝具を奪い、片方のマスターに令呪を使わせたスザクは介入された双方から恨みを買っていると推理した。 逆に残る二組のマスターのどちらかを攻撃すれば折角の共闘関係を壊させまいとスザクが横槍を入れる可能性が高いとも考えた結果、スザクを潰すのが最もリスクが低いという結論に達した。 逃げの一手を打たれないようあらかじめキャスターを後ろに伏せさせた上で敵サーヴァントの索敵範囲外からライダーの宝具“黒王争覇”で強襲を仕掛けたのだった。 それでも同盟相手が救援に来るのではないかという可能性を完全には捨てきれなかったため、慎二は大きな態度とは裏腹に内心では気が気でなかったのだが、結果的にはその心配は杞憂に終わった。 残る二組は元々一戦交えていた連中だ。主導権を握っていたスザクが潰えれば再び勝手に潰し合ってくれるのは明白だと慎二は考えている。 元々間桐慎二は所謂要領が良いとされるタイプの人間だ。 それを支えているのが(本人はさして自覚もしていなければ誇ってもいないが)人より優れた推理能力だった。 第五次聖杯戦争では魔術回路を有さない事から来るコンプレックスや家のしがらみ、過剰なまでの衛宮士郎や遠坂凛への敵愾心から最後まで発揮されることは無かったそれがこの場においてついに存分に振るわれた。 この聖杯戦争でもやはり魔力供給は不得手だが、サーヴァントを指揮するマスターとしては決して悪くない素養を持っているのだ。 対キャスター戦に続いて完全な勝利を収め、バーサーカーをも手駒にした慎二には精神的な余裕が生まれつつあった。 キャスターを使ってスザクを引き続き脅すことで彼はスザクがこれまで入手してきた情報をそっくり手に入れることにも成功した。 それを基にして慎二なりの今後の戦略を構築していく。 (夜も明けたしとりあえずは家に帰ってしばらくは静観だな。 バーサーカーが回復しないようなら魂喰いでもさせれば良い。 やりすぎたらペナルティがあるらしいけどそれで損をするのは僕じゃなくて枢木の方なんだ、ゲームみたいな杓子定規なルールはこういう時ありがたいね) それは先ほど間目智識からムーンセルについて聞き出した時に確かめた事だった。 多数のNPCを殺傷し続けた際、ペナルティを被るのは実行したマスターとサーヴァントに限定される。どのような状況にあるかは斟酌されないということだ。 (衛宮、少しは猶予をやるよ。 あっさり僕が勝ってしまったんじゃつまらないからね。 べ、別にあいつのサーヴァントの宝具が怖いわけじゃないぞ) ニヤつきながら間桐家へと引き返していく慎二の背中をキャスターは無表情で見つめていた。 (まだまだ警戒されているようですね。 これはもう少し積極的に取り入らなければ隙を作らないかもしれません) 先ほど屋上でスザクらの戦闘を観察させた際、慎二はやろうと思えばより詳細な情報を知ることもできた。 彼が屈服させたサーヴァントは魔術師の英霊であるキャスター。 その類い稀な道具作成技能を活用すればサーヴァントの眼に頼らずとも慎二が直接戦況を覗くこともできた。 そうしなかったのは令呪で従わせているにも関わらず未だ完全には自分への警戒を解いていないからだ、とキャスターは考えている。 いや、先ほどの戦いでキャスターに背中を晒すような指示はしていたことから基本的には屈服させたものと思っているが無意識レベルでは信用していない、といったところだろう。 未だサーヴァントとしての意識が薄いキャスターは知らないことだが慎二が元いた世界の聖杯戦争においてキャスターのサーヴァントは奸智に長けた裏切りのクラスとして知られている。 如何に令呪の力で従属させているとはいっても結局のところキャスターも慎二にとっては敵サーヴァントの一人でしかない。 そんな輩に自身の命を預ける道具を用意させるなど自己の保身を何よりも優先する今の慎二には考えられないことだった。 当然にして彼は未だキャスターに間桐家を工房として使う許可を与えていない。 安心できないという何ら戦略的見地に基づかない理由で高い後方支援能力を持つキャスターを通常戦力としてしか用いないのは下策と評する他ないが、その下策が結果的にキャスターにとって動きにくい状況を作っているのもまた事実ではあった。 キャスターはこのままずっとあの小物としか言い表せない少年の道具でいる気は全く無い。 いや、そもそも極めて意思の薄弱な羽瀬川小鳩のサーヴァントでい続ける気も更々無かった。 彼はこの戦いを勝ち上がるためにより有力なマスターを常に探し求めている。 だがその計画を実行に移すためには現在自分の生殺与奪を握っている慎二を上手く油断させ、厳しい条件の中謀殺せねばならない。 バーサーカーをも従えた慎二はいよいよもってキャスターを使い潰すことに躊躇いなど覚えなくなるだろう。 何しろバーサーカーのサーヴァントには裏切りを考える思考能力など無いのだから。 (ただ…今のところ運があの少年に味方しているのも事実。 その運が持続している限りは従っておくのも一つの手ではある…) キャスターが分析する限り間桐慎二はこの聖杯戦争に参加したマスターの中でも最も幸運に恵まれているマスターだ。 彼自身は貧弱なマスターながら開始早々に輪をかけて貧弱なマスターである小鳩を補足し、キャスターを手駒にしたという幸運を発揮した。 また、小鳩の拷問に時間を費やし、学園に寄り道したことで運良く先に学園で行われたのであろう戦闘や直後に起こった大規模な宝具合戦に巻き込まれなかった。 更に幸運なことにスザクらの戦いも比較的安全な場所から傍観し、最もリスクの低い戦略を立て、結果としてバーサーカーをも屈服させることにも成功した。 運もまた実力の内。キャスターは生前の経験則から運を味方につけている者を無理に排除しようとする者は往々にして手痛いしっぺ返しを受ける事を知っている。 如何にしてあの小心者なマスターに取り入り、どのようなタイミングで反旗を翻すか。 キャスターはそれらの方策を未だ計りかねていた。 【深山町・民家跡/早朝】 【間桐慎二@Fate/stay night】 【状態:疲労(小)、気分高揚、残令呪使用回数2画】 【ライダー(ラオウ)@北斗の拳】 【状態:魔力消費(中)、令呪】 ※令呪の詳細は以下の通りです 間桐慎二に異を唱えるな 【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ】 【状態:疲労(大)、右腕骨折、左腕欠損(処置済)、両足喪失、絶望、残令呪使用回数1画】 【バーサーカー(ランスロット)@Fate Zero】 【状態:ダメージ(特大)、魔力消費(特大)、右大腿に刺し傷(通常の回復手段では治癒不可能)、令呪】 ※令呪の詳細は以下の通りです 間桐慎二及びラオウに命令された事柄を除く一切の行動を永久に禁じる ※リュウキドラグレッダーは完全に破壊されました 【キャスター(ゾルフ・J・キンブリー)@鋼の錬金術師】 【状態:健康、令呪】 ※令呪の詳細は以下の通りです 間桐慎二及びラオウに従え 間桐慎二の命令があり次第速やかに自害せよ
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711 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/11/08(水) 04 37 41 テトリスのように湯船の真ん中に入る事にする。 幸い、体積的に入ることは不可能ではなさそうだ。 ……ただし、なんというか、その、身体を押しつけ合う事になりそうではある。 湯船の真ん中というのはどうかと考えるが、当然下には足があるだろう、踏みそうなのでうまく回避しなければならない。 まして三人ともかなりぐったりしている。 踏んでしまったらそれはもう大変なことになるだろう。 そーっと足を入る。 足同士が触れているのが分かるが、問題なく湯船に身体を沈め……られなかった。 沈めようとした尻の下に誰かの足がある。 それはそうか、ぶつからないように出来るだけ互い違いにするだろうし。 ……だとすると。 遠坂の方を向く。 隣にはイリヤが眠りそうな表情で浸かっている。 だとすれば残りは。 「あー、氷室、すまん」 氷室の隣に入ることだ。 腰は下ろしたが足は体育座りのように曲げたままだ。 多少窮屈だが仕方がない。 「ん……私は、構わん……」 本当にぐったりとしているのだろう、反応が妙に鈍い。 無言のまま数分が過ぎる。 「衛宮……少し頼みがある」 「ど、どうした?」 氷室が身体を押しつけて話しかける。 普段ならば絶対にあり得ない場面で思わず慌ててしまう。 「身体は温まったのだが、どうにもだるくてな……余り動けないと言うことだ」 話が見えてこない。 「それでな……背中だけでも洗って貰えると嬉しいのだが」 え? 「そ、それなら遠坂とかにやって貰った方がいいんじゃ」 「いや、遠坂嬢も同じような状態のようだし……まともに動けるのは衛宮だけのようだし……頼めるのは君くらいと言うことだ」 言葉もうまく発せないのか、氷室の口調は普段から少しだけ変わっていた。 そして普段の彼女ならばこういった考え方はしないのだと分かる、つまり余程大変な状態なのだろうと察するに余りある。 「しかし……なんでこんなに怠いのかな……」 「ふむ……少しやりすぎましたか」 他者封印・鮮血神殿、風呂場という無防備な極小空間で、彼女の宝具を発動させて吸収した。 勿論痕跡を残すような事はしない。 その辺りのことを彼女は分かっている。 彼女が今回吸い取ったのは精気や性欲の類だ。 それを一時的に思い切り露出させ、その部分を一気に吸い上げた。 しかし魔力の強い人間 遠坂 も居たため思わず吸い上げ過ぎてしまった、ここは反省するべき所だと自戒する。 「しかしシロウ、思ったよりも……ふふふ」 喉の奥に士郎の血を残したまま思わず笑みを浮かべる。 「あら? ライダー、どうしたの?」 「いえ、なんでもありません、それよりもサクラ、少しお話があるのですが……」 「ん? なに?」 「いえ、大したことではないのですが……部屋に行きましょう」 「あ、それじゃお茶とか用意するね、ライダーは部屋で待ってて」 風呂場の状況を、桜は気付かなかった。 「そ、それじゃあ、洗うぞ」 「ん……頼む」 氷室はそれだけ言うと、無言で前を洗い出す。 それと同時に、士郎も氷室の背中を洗い始める。 スポンジ越しではあったが、女性特有の柔らかさと同時に筋肉の張りの強さを感じる、しなやかな背中だった。 「……凄いんだな、氷室」 「どうした? 藪から棒に……」 「いや、無駄なく鍛えられてるなぁって思ってさ」 スポンジの泡で背中を泡だらけにしながら、背中越しの腹筋を感じ取る。 背中を指先で軽く突いてみれば、それ以上の強さで押し返すような、内包する強さを感じ取る。 「それなら蒔の身体を洗うと良いぞ、あれは私よりも鍛えて居るぞ」 もっとも、断られるとは思うが、と続ける。 「……ま、機会があったらな」 そんなことは多分無いと思うけど、と続ける。 「しかし、まるで同性と会話しているような気分だ、安心する」 「……それは褒めてるのか貶してるのかちょっと判断できないな」 「褒めている、私は男性として衛宮を意識しているからな」 途端に恥ずかしさが復活する。 背中に直接触れても感じなかったのに、その一言で復活してしまったようだ。 恥ずかしさに追われ、慌てて背中を洗う。 「……終わったぞ、氷室」 背中にお湯を掛ける。 頭からもと頼まれたので頭からも掛けた。 「ん、さっぱりした、ありがとう、衛宮」 気付けば、氷室は自力で動けるようになっていた。 沈没船セプテントリオン:「あ」大変だ、気付くとイリヤが沈みかけている 3倍のあかいやつ:「あらあら、随分と仲が良いのね」浴槽から遠坂が声を掛けた 反撃の狼煙:「では今度は私が洗ってやろう」なんて事を言われた 質問への回答:「どうだった?」風呂から出て、茶の間でキャスターに聞かれた
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【登場】KK聖杯戦争 【真名】大岡 忠相(オオオカ タダスケ) 【クラス】ルーラー 【マスター】豊川 典善(トヨカワ テンゼン)(依り代) 【HP】 52/52 ←元は46 【ラック】 3/3 【宝具】 2/2 【筋力】EX (8) 【耐久】A+ (7)+1 【敏捷】E (1) 【魔力】A++(8)+1 【幸運】C (4)+1 スキル 裁定者 自身は令呪を『自身以外の聖杯戦争の参加者』と同じ数所持し、全ての参加者に1画ずつ使用、または譲渡できる。自身はマスターを作成できず、聖杯戦争に優勝できない(願いを叶えられない) 不惑 任意の判定の直前に発動する。ラックを1点消費することでその判定を【筋力】で行うことができる。 不憂 [物理防御判定]時と[魔術防御判定]時に発動する。その判定の補正値に+4する。 不懼 サブ行動を消費して発動する。3ターンの間、味方陣営が与えるダメージに+1D6する。 宝具 地蔵縛 任意のタイミングで発動、解除可能。同じエリアにいる自身も含めたすべてのマスター、サーヴァント、その他はスキルを使用することが出来なくなる。 すでに発動しているスキル、宝具の効果も解除され、常時発動ものはこの宝具の効果中のみ解除される。また宝具は通常通り使用できる。 真母審争 自身が《物理攻撃》《魔術攻撃》を行う時に発動する。自身の攻撃判定が相手の防御判定を上回った時、対象の契約するサーヴァント、あるいはマスターとの契約を解除する。この時与えられるダメージは0になる。 マスターを持たないサーヴァントは全てのステータスが-2(1以下にはならない)され、マスターがサーヴァントに、あるいはサーヴァントがマスターに及ぼしていた一切の効果が消滅する。 この効果は戦闘フェイズ終了時まで持続する。 基本的にサーヴァントと召喚者であるマスターは同じシーンに存在しなければならず、マスターが同じシーンに存在しない、あるいはマスターを持たないサーヴァントは全てのステータスが-2(1以下にはならない)され、マスターがサーヴァントに、あるいはサーヴァントがマスターに及ぼしていた一切の効果が消滅する。 サーヴァント作成:TYPEⅡ(http //wikiwiki.jp/fateanother/?%A5%B5%A1%BC%A5%F4%A5%A1%A5%F3%A5%C8%BA%EE%C0%AE%A1%A7%A3%D4%A3%D9%A3%D0%A3%C5%AD%B6) 【容姿】 白い髪を丁寧になでつけた痩躯の老人。 【願い事】 ない。強いて言えば聖杯戦争の早期かつ穏便な終結。 このK市の土地の管理者である老人、豊川 典善(トヨカワ テンゼン)の体を依り代にして現界した。
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『わたしは夢を見た、その夢はある人の記憶』 「杏寿朗」 「はい!母親!」 「よく考えるのです。母が今から聞くことを。なぜ自分が人よりも強く生まれたのか分かりますか?」 「うっ……分かりません!」 「弱い人を助けるためです。生まれついて人よりも多くの才に恵まれた者はその力を世のため人のために使わねばなりません。天から賜りし力で人を傷つけること、私腹を肥やすことは許されません。弱き人を助けることは強く生まれ者の責務です。責任を持って果たさなければならない使命なのです。決して忘れることなきように」 「はい!」 「私はもう……長くは生きられません。強く優しい子の母になれて幸せでした。後は頼みます」 「うまい! うまい! うまい!」 「煉獄さん食べ過ぎ!?」 「うまい!!」 とある店に少女と青年がいた。 ひとりは赤いグラデーションがかかった髪をしていて、御刀を持った少女。彼女の名前は安桜美炎。今回の聖杯戦争をの参加者である。 もうひとりは炎を思わせる焔色の髪と眼力のある瞳をしていてる青年。彼の名前は煉獄杏寿郎。今回の聖杯戦争で美炎が召喚したセイヴァーのサーヴァントである。 どうやら二人でお昼を食べていたようだか……。 「うまい!!」 「まだ食べるの!?」 そして、しばらくして……。お昼を食べた二人は聖杯戦争の話をしていた。 「安桜少女! 君の願いはなんだ!」 煉獄が願いについて美炎に聞く。 「わたしには誰を犠牲にしてまで叶えたい願いはないかな。わたしはこの聖杯戦争を止めたい!」 「そうか! 俺の願いは誰も死なせないことだ! だから君の力になろう!」 「うん、ありがとう! 煉獄さん!」 美炎は煉獄に笑顔でお礼を言う。 「話も終わったし、なにか食べたよう!!」 「まだ食べるの!?」 この二人の聖杯戦争はどうなるのか。 【サーヴァント】 【クラス】 セイヴァー 【真名】 煉獄杏寿郎 【出典】 鬼滅の刃 【性別】 男性 【ステータス】 腕力B 耐久B 敏捷A 魔力B 幸運C 宝具A 【属性】 中立・善 【クラス別能力】 カリスマ:B 軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において自軍の能力を向上させる。 対英雄:B 英雄を相手にした際、そのパラメーターをダウンさせる。ただし反英雄には効果は薄い。 【保有スキル】 単独行動:A マスターから魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。 ランクAならば、マスターを失っても一週間は現界可能。単独でも最後まで戦い続けた彼の逸話が昇格したスキル。 戦闘続行:A 最後まで戦い続けた彼の逸話が昇格したスキル。 【宝具】 『煉獄』 ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~100 最大補足:1000人 彼が使う炎の呼吸の奥義が宝具になったもの。敵を一気に殲滅する。 【人物背景】 『鬼滅の刃』の登場人物。 『鬼殺隊』の『炎の柱』にして、『炎の呼吸』の使い手。 正義感が強く、明朗決活で豪快な性格。 面倒見の良い性格でもある。 彼の最期は『上弦の参』である『鬼』の『猗窩座』との戦いである。その戦いで彼は死亡するが、その意志と想いはとある少年たちに託された。 【サーヴァントとしての願い】 誰も死なせないこと 【方針】 マスターに任せる 【把握素体】 原作漫画及び、アニメシリーズ&劇場版 【マスター】 安桜美炎 【出典】 刀使ノ巫女 刻みし一閃の燈火 【性別】 女性 【能力・技能】 『写し』 刀使の基本戦術で、最大の防御術。 『迅移』 刀使の攻撃術の一つ。通常の時間から逸して加速する。 『八幡力』 筋力を強化する。 『加州清光』 彼女が使う御刀。 【人物背景】 ゲーム『刀使ノ巫女 刻みし一閃の燈火』の主人公。『美濃関学院』所属の中学二年生。 前向きで真っ直ぐな性格。人懐っこい性格でもある。 アニメの主人公『衛藤可奈美』とは友人でもあり、ライバルでもある。 参戦時期はゲーム終了後である。 【マスターとしての願い】 特になし。聖杯戦争を止める。 【方針】 協力してくれるマスターを探す。 【ロール】 とある学園の生徒で刀使。 【把握素体】 ゲーム及び、OVA
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【 願う 何を? 幸せ 何が君の幸せ?】 ◆ACfa2i33Dc 早朝の日差しが、偽りの街に差し込む。 街の端。隣町との境目、絶対領域の境界線。 「奉野」という表札の掛けられた一軒家。 居間で椅子に腰かけて、シルクハットを被った少女――シルクちゃんは、その手紙をずっと注視していた。 その目に感情はない。 ただ、興味と、そして疑心だけがある。 「――どうしました? シルクちゃん様」 居間の奥、キッチンから割烹着に似た侍女服を着た女性が顔を出す。 当然、ただの女性ではない。頭からは、まるで鹿のそれのように二本の角が生えていた。 自動人形、鹿角。シルクちゃんの従者であるランサー――その、更に従者。 「鹿角か。……ランサーは?」 「忠勝様ならば、外で警戒を」 「そうか。……どうでもいいけど、その『シルクちゃん様』って微妙に呼び方として違和感があるからやめない?」 「いいえ。私の主は忠勝様一人のみです。いくらシルクちゃん様が現在の忠勝様の主と言えど、やはりマスターと呼ぶのは不適格かと」 「妙なところで杓子定規だね君は。……まあいいや、これなんだけどさ」 椅子に腰かけたまま、シルクちゃんが鹿角へと手紙を差し出す。 薔薇の模様で彩られた便箋。鹿角はそれを受け取って、ざっと手紙の内容に目を走らせた。 「ルーラーからの手紙、ですか」 「うん。朝起きて郵便受けの中を見たら入ってた。この内容をどう思うか聞きたいんだよね」 「5000円とはまたみみっちいのかそうでないのか判断がつけ難い金額ですね」 「いや、そこじゃなくて」 「おや、そうでしたか。では、掲示板を見るために鹿角が契約している通神帯(ネット)と表示枠(サインフレーム)を使用したいという事ですか? この家何故か回線どころかテレビすらありませんし」 「できるのそんな事? ……いや、確かに興味はあるけれど、それでもなくて。フェイト・テスタロッサの事だよ」 送られてきたルーラーからの手紙に記されていた、諸所の連絡事項。 その一つ、『フェイト・テスタロッサというマスターの捕縛』。 同封されていた写真に写っている金髪を長いツインテールにした少女を眺めながら、シルクちゃんは問うた。 「開始早々の『捕縛依頼』。どう思う?」 「どうと言われましても。 現状で最も可能性の高い判断といたしましては、このフェイト・テスタロッサという参加者が何らかのルール違反を犯したと見ますが」 「そうだね、それが真っ当な判断だ。 ただ……」 シルクちゃんは、そこで一旦、言葉を切った。 「ルーラーは、あまり信用できないかもしれないな」 「ほほう? それはまた何故でしょう」 「聖杯戦争のルールを犯したのなら……、そんなものがあるのかは知らないが、とにかく、普通に理由を明かしてもいいんだ。 それをしないっていうのはつまり、参加者に明かすには後ろめたい何かがあるからだ……って、推測もできる。 そのあたりは、本人に聞いてみないとわからないけれど」 「なるほど。確かにそう解釈する事もできますね。しかし、ならばどうするのですか?」 「……、どうするって?」 「ルーラーが信用できない、というのはわかりました。しかしそれはシルクちゃん様独自の解釈であり、他のマスター達もそう思っているとは限りません。 令呪という報酬もある以上、フェイト・テスタロッサを巡ったなにかが街で起こるのは避けられないでしょう」 一直線に、鹿角がシルクちゃんを見つめる。 感情を有さない瞳が、感情を消したはずの瞳を射抜いた。 「率直に言えば、無干渉を決め込んで騒ぎが収まるまで待つのが得策かと」 「………………」 実際のところシルクちゃんにも、それは理解できていた。 ルーラーが信用できるかどうかは置くとしても、フェイト・テスタロッサを追えば同じように彼女を追う参加者と戦いになるのは避けられない。他の参加者との接触の確率が跳ね上がるのは聖杯戦争において、好ましくない。 戦わなければ願いに辿りつく事はできない。しかし戦うばかりでは消耗し、討ち取られる可能性をいたずらに上げるだけ、というのも事実だった。 ルーラーに反する、という選択肢もまた遠い。ルーラーの持つ令呪を持ってすればランサーを自害させる事は容易い。 下手をすれば、自分が第二のフェイト・テスタロッサとなる可能性だってある。 実際のところシルクちゃんにも、それは理解できていた。 ――ならば、どうしてこうも引っ掛かるのか。 「……わかっては、いるんだけどね」 我知らずの内に、シルクちゃんは呟いていた。 この街を忘却の国と見立てるならば。 それを裏から操るルーラーは。 そして、そのルーラーに追いかけられる少女は―― 飛躍が過ぎるのは、本人にもわかっていた。 けれど悲しい事に、彼女には己の内に膨れ上がっていたなにかを発散する為の言葉が無かった。 「……ランサーを呼んでくれ、鹿角。出る」 テーブルの上に置かれていた羽ペンを握る。シルクちゃんは地面を蹴り、席を立った。 その目に感情はない。 ――ないはずだ。 「おやおや? 先程の提案をもうお忘れですか」 「わかってるさ。だから極力他の組との接触は避ける。図書館の近くも張られてるだろうから、できるだけ近寄りたくないね」 「ではどうするおつもりで?」 「フェイト・テスタロッサの顔でも見てくるよ。捕まえるつもりはないけどね。ついでに、ふらふらしてるマスターを一組倒せたら上出来ってところかな。 鹿角は家で待機。魔力を感知されたりはしないだろうけど、その外見は目立つ」 「――そうですか」 自動人形である鹿角が、主(正確には、シルクちゃんは主のまた主だが)の目的に本気で口を挟むことはない。 だから鹿角は、その判断に対して何も言う事はなかった。 「では通神で忠勝様をお呼びしますので、その間朝食を食べてからお出掛けください」 代わりにその口から紡がれたのは、そんな言葉だった。 一旦キッチンに引っ込んで、準備していた朝食をテーブルに載せていく。 「……今すぐ出たいんだけど」 「それは構いませんが。食材が無駄になりますし、長い時間外に出る事を考えれば朝食は摂っておいた方がいいかと」 「………………」 抗議の言葉にも構わず、鹿角は手早く配膳を終わらせる。 顔を顰めていたシルクちゃんも、テーブルに並んだ和食の数々を目にして、観念したように再度席に着いた。 「夕食も仕込みをしておきますので、19時までにお帰りください」 ∇ 星輝子の朝は早い。 『親友』であるキノコ達はある程度手入れをしなくてもすくすく育つが、それとこれとは別の問題だ。 「フヒヒ……フヒッ……今日も元気か……? ……うんうん、元気そうだな……」 キノコの原木に向かって挨拶。様子を見てから、満足気に頷く。 他人からすれば奇矯な行為だが、彼女にとってはいつもの日常だった。 かびかび。 かびかびかびかび。 「……あっ……あ、新しい友達……おはよう……。 そっちも……元気か……?」 そしてこちらは、いつもとは違う日常。 周囲を漂う『かび』に、輝子は先程と同じように挨拶する。 「かび」 「そうか……よかったなー……フヒッ」 『かび』達から返された笑顔に、やはり輝子は満足気に頷いた。 「……あ……メール、来てる……誰かな……」 一通り挨拶を終わらせたところで、充電器にかけてあった多機能携帯電話にメールの着信が来ているのに気付く。 充電器から多機能携帯電話を手に取って操作。ちょっと昔は慣れない操作だったこれも、今ではすぐにこなせるようになった。 アイドルになって、色々な人間と知り合えたお陰だ。 「フヒッ……あれ、知らない人だ……ルーラー?」 受信箱に入っていたメールの送り主は、知らないメールアドレスだった。 題名は『ルーラーより、聖杯戦争予選通過者の皆様へ』。 一瞬迷惑メールを疑って、でも聖杯戦争という単語にそれはないと思い直す。 開いてみれば、内容は聖杯戦争についてのお知らせだった。 聖杯戦争そのものにはあまり興味のない(叶えたい願いはもちろんあるけれど、しかし喧嘩は嫌いな)輝子ではあったが、重要な事が書いてあるかもしれないし一応上から下までじっくりと目を通す。アイドルも報・連・相は大事だ。 そして、一つの連絡が輝子の目に留まった。 ルーラーが用意したという、聖杯戦争参加者のための掲示板ではない。(ボッチが身体に染み付いていた彼女は、顔も知らない聖杯戦争の参加者と交流する事になるだろう掲示板は苦手だった) 電子マネー5000円分でもない。(これは使い道に悩んだが、最終的に通販サイトでキノコに関するあれこれを注文するのに使うのを決めた) 『捕獲クエスト』の対象として設定された、金の髪をツインにした少女。 彼女の事で、輝子の頭はいっぱいになった。 「……ライダー」 「うん? どうした、マスター」 呼びかける声に応じて、ライダーが歩いてくる。その鼻先に、多機能携帯電話を突き付けた。 「な、なんだ? ……ルーラーからの連絡ぅ?」 唐突な行動に目を白黒させながらも、ライダーは輝子の手から多機能携帯電話を奪い取って操作。 メールの内容に目を通して確認する。 「えーっと……このフェイトって奴がどうかしたのか?」 「この子も……ボッチ……なのかなって……」 『捕獲対象』の少女――ルーラーからの情報が正しければ、名は『フェイト・テスタロッサ』。 彼女のことが、輝子はどうしても気になってしまった。 だって、この聖杯戦争に、彼女の味方はいないのだ。他の参加者はおろか、本来公平な筈のルーラーまでもが敵に回ってしまった。 皆に狙われる立場になって、彼女はきっと一人ぼっちだ。 それがどうにも、輝子には我慢がならなかった。『トモダチ』と出会う前の自分が、そうさせるのか。 「……いや、サーヴァントがいるんだからボッチじゃないんじゃないの?」 「あっ」 「だいたい、フェイトって奴はルーラーから捕獲しろって命令されてるんだろ。それなら危険な奴かもしれないぞ」 呆れたように言うライダーの指摘は、確かにその通りではあった。 捕縛の命令をルーラーが出したという事は、フェイトという少女はなにか悪いことをしたのかもしれない。 下手に近付けば攻撃されるかもしれないし、そうでなくとも他の参加者とも戦う事になる可能性は高かった。 「でも……」 けれど。 「危険な子なら、ほら……幸子ちゃんと小梅ちゃんも、危ないし……」 輝子にとって、その指摘は逆効果だった。 そもそも輝子の大目的は、この街にいる幸子と小梅を守ること。 危険な人物が街をうろついているなら、それこそどうにかしないとならない。 「………………」 そう輝子が考えているのを悟ったのか。ライダーは、不機嫌そうに顔を顰めた。 「……オレサマは手伝わないからな!」 「うん、乗り物の改造お願い……」 「そういう事でもなーいっ!」 プリプリと擬音化された怒り方をしながら、ライダーはこの前と同じように、かびるんるん達を引き連れて行ってしまう。 ただ輝子は、ライダーがいつも徹夜して(サーヴァントは眠る必要がない以上、徹夜と呼ぶのが正しいのかはわからないが)自らの乗り物を改造している事を知っていたから、特に不安に思ったりはしなかった。 「学校、行かないと……今日も幸子ちゃんと小梅ちゃんとお話……フ、フッ」 そうして輝子は、今日も学校の支度を始める。 聖杯戦争は始まったが、幸子と小梅が来ているだろう学校に行かないなんて、輝子には考えられない話だった。 だから気が付かない。掲示板に苦手意識を持って開きもしなかった彼女には。 悪意が、彼女の仲間、そして『トモダチ』を蝕もうとしている事に。 ――気が付かない。 ――今は、まだ。 ∇ かくして二人の少女が、一人の少女を巡った盤面に乗る。 異なる動機で。異なるやり方で。 【D-7/奉野宅/一日目 早朝】 【シルクちゃん@四月馬鹿達の宴】 [状態]健康 [令呪]残り三画 [装備]魔法の羽ペン [道具] [所持金]一人暮らしに不自由しない程度にはある [思考・状況] 基本行動方針:聖杯を手に入れて、復讐する。 1.朝食を食べたら街に出る。 2.フェイト・テスタロッサに対しては―― 3.ルーラーへの不信感。 [備考] ※フェイト・テスタロッサを助けるつもりはありません。ですが、彼女をルーラーに突き出すつもりもありません。 ※令呪は×印の絆創膏のような形。額に浮き上がっているのをシルクハットで隠しています。 【ランサー(本多・忠勝)@境界線上のホライゾン】 [状態]平常 [装備]『蜻蛉切』 [道具] [所持金] [思考・状況] 基本行動方針:主の命に従い、勝つ。 1.マスターと一緒に街へ出て一暴れする。 [備考] ※宝具『最早、分事無(もはや、わかたれることはなく)』である鹿角は、D-7の奉野宅に待機しています。 【C-2/マンション/一日目 早朝】 【星輝子@アイドルマスターシンデレラガールズ】 [状態]健康 [令呪]残り三画 [装備] [道具]多機能携帯電話 [所持金]一人で暮らせる程度にはある [思考・状況] 基本行動方針:幸子ちゃんと小梅ちゃんを守る。 1.学校へ行って、幸子ちゃんと小梅ちゃんに会う。 2.フェイト・テスタロッサが気になる。 [備考] ※掲示板を確認していません。 【ライダー(ばいきんまん)@劇場版それいけ!アンパンマン『だだんだんとふたごの星』 及び『よみがえれバナナ島』 他、劇場版】 [状態]平常 [装備]宝具『俺様の円盤(バイキンUFO)』、『地の底に潜む侵略者(もぐりん)』、『踏み砕くブリキの侵略者(だだんだん)』 [道具] [所持金] [思考・状況] 基本行動方針:宝具を改造して、準備を整えてから行動したい。 1.宝具をエンチャントする。輝子については勝手にしろと言っているが――? [備考] ※どの宝具から改造しているかは後続にお任せします。 BACK NEXT 006 匿名希望のアガパンサス 投下順 008 砂糖菓子の朝はほろ苦い 時系列順 BACK 登場キャラ NEXT 000 前夜祭 シルクちゃん&ランサー(本多・忠勝) 021 いつか見たグラジオラス -017 シルクちゃん&ランサー 000 前夜祭 星輝子&ライダー(ばいきんまん) 014 絶望少女育成計画Reflect -012 星輝子&ライダー
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436 名前: ひとりぼっちの聖杯戦争 ◆IkOakw2geY [sage 時に弟者、完結させるって約束したら連載二本かかえてもOK?] 投稿日: 2006/10/29(日) 10 42 52 一、俺がもう一度遠坂を殺す。 憶えている。 遠坂凛という一人の少女を。 「おまえは、誰だ?」 「……衛宮君?」 遠坂に似たナニカは彼女によく似た顔でさえずる。声もとてもそっくりで、だからこそ浮き彫りになる違いが許せない。 イライラする。遠坂凛の誇りが、遠坂凛の生き抜いた人生が馬鹿にされている。あいつはあんなにも一生懸命で、駆け抜けた姿はとても綺麗だったというのに。 「下手な芝居はやめるんだ。お前は遠坂とは似ても似つかない」 「もう、どうしたのよ士郎。わたしはわたしよ、遠坂凛。士郎、忘れちゃったの?」 彼女は少し寂しそうに目を伏せた後、くすりと笑って、目を細めた。嬉しそうに、楽しそうに、ほんの少しだけ艶やかに、目の前のナニカはすり寄ってくる。 「あいつは絶対にそんな笑い方はしない。そんな優しい雰囲気は纏わない。そしてなにより、そんな楽しそうな仕種はしないんだ」 「……………………」 「お前は、知らないのか。あいつはな、もうとっくに決心してしまったんだ。魔術師として。冷酷で人でなしな生き物として生きようと」 一瞬だが、遠坂を騙るナニカの表情が歪んだ。仮面の下に、酷く、イビツで壊れた笑顔が見えた気がする。 「だからこそな、彼女はずっと悩んでいたんだ。苦しんでいたんだ。自分の外内面と外綿のギャップにな。……当たり前さ。なんだかんだいってあいつは、その実どこにでもいる普通の女の子だったんだから」 それでも、遠坂は絶対に弱音を吐かなかった。苦しみを表にださなかった。意地を張って、猫をかぶって。何でもないって顔で、当たり前のように前に進んでいったんだ。 「……正直、羨ましかった。俺は、ほら、とっくに壊れていたみたいだからさ。あいつのそんな泥臭い人間らしさとか、それなのに馬鹿みたいに意志が強いところとか。そばで見てて、格好いいって思ったんだ。駄々っ子みたいに依怙地になって颯爽と突き進んでいったんだから」 本当に遠坂は強かった。一度ぐらい泣いてもよかったのに。弱音の一つぐらいこぼしても罰なんてあたらなかっただろうに。遠坂はどう変わっても遠坂で、呆れるくらい眩しかった。 ―――そんな彼女を、俺は裏切ったんだ。だからせめて、あいつの守ったつまらない意地ぐらいは、最後まで守り通してやらないと。 「お前はそれを侮辱した。彼女の歩んだ道程を。遠坂が秘めていた決心を。だからさ、もうやめてくれ。おまえがその姿のままでいるのなら、俺はおまえを殺さなきゃいけない」 俺がそう告げると、今度こそコイツは、おぞましいぐらいの笑みで破顔した。 「残念ね、衛宮士郎。あなたがそこまで壊れていたなんて。私の舞台に人形の居場所はないの。消え去りなさい、不出来なガラクタ」 夜風に、血の嫌な臭いがこびり付いている。強すぎる月影が目に痛い。都会の夜空はとても明るくて、見上げても星なんて見えやしない。 「フフ……フフフフ…………、ふふっ、なんだ……、そうだったの…………」 さっきまで遠坂の形をしていたものが笑っている。穴の空いた肺で、切り裂かれた喉で。幾重もの件に貫かれハリネズミになったその姿で。 「悪くないわ。悪くない展開よ衛宮士郎。いずれ魔法の欠片に届きかねないこの躯も上物だったけど―――」 スイッチが切り替わった。明らかに人でないものの気配がする。辺り全体に充満する甘ったるい匂い。このとき、この場所は明らかに異界に変じた。 「衛宮士郎。オマエは壊れてなんかいない。コワレタふりをしているだけだ! フフッ、アハハハハハハッ―――! 素晴らしい。素晴らしいスバらしイスばラシイ―――! お前の恐怖は、お前の在り方はスバラシイ! お前に決めた。お前こそ適任だ。お前になれば、お前の恐怖をもとにすれば、私はかつてないワタシになれる!」 結局、どんな事件だったのだろうか。現れた片鱗はそう喚いてそれっきりで、遠坂の幻は塵に帰るかのように姿を消した。 街の違和感は拭われない。ざわめきが胸を襲っている。どうしようか。あいつとの戦いで大分消耗してしまったけど―――。 一、もう少し新都を調べてみる。 二、深山の方をまわってみる。 三、家に帰って休む。 投票結果 一 1 二 1 三 5 決定?
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. 2017-02-01 聖杯戦争 閉幕 (Remember us.) ここは様々な作品のキャラクターをマスター及びサーヴァントとして聖杯戦争に参加させるリレー小説企画のまとめwikiです。 本編には殺人、流血、暴力、性的表現といった過激な描写が含まれています。閲覧の際は十分にご注意ください。 メニュー
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キャラシート【としあきの聖杯戦争TRPG】 【クラス】 【真名】 【容姿】 【願い事】 【その他】 【英雄点】点(ステ点・スキル点):令呪0画消費 【HP】5/5 【筋力】E :1 【耐久】E :1 【敏捷】E :1 【魔力】E :1 【幸運】E :1 【スキル1】 00点: 【スキル2】 00点: 【スキル3】 00点: 【宝具】『』() 1/1 【ランク・種別】ランク: 種別: レンジ: 最大捕捉: 【効果】 +2019/01/01版 泥 【CLASS】 【真名】 【異名・別名・表記揺れ】 【性別】 【身長・体重】cm・kg 【髪色】 【瞳色】 【スリーサイズ】// 【外見・容姿】 【属性】 【天地人属性】 【その他属性】 【ステータス】筋力: 耐久: 敏捷: 魔力: 幸運: 宝具: 【クラススキル】 スキル名 スキル効果 【固有スキル】 スキル名 スキル効果 【宝具】 『宝具名(ルビ)』 ランク: 種別: レンジ: 最大捕捉:人 宝具説明 【Weapon】 『武器名』 武器説明 【解説】 サーヴァントについての解説。 +絆Lv 【キャラクター詳細】 キャラせつめい 【パラメーター】 筋力 ■■■■■:C 耐久 ■■■■■:EX 敏捷 ■■■■■:E- 魔力 ■■■■■:A+ 幸運 ■■■■■:A 宝具 ■■■■■:EX 【絆Lv1】 身長/体重:cm・kg 出典: 地域: 属性: 性別: 一言説明 【絆Lv2】 来歴せつめい 【絆Lv3】 サーヴァントのスタンスせつめい 【絆Lv4】 ○スキル名:ランク スキルせつめい 【絆Lv5】 「宝具名」 ランク: 種別: レンジ: 最大補足: ほうぐるび ほうぐせつめい 【「クエスト名」をクリアすると開放】 こまかいせつめい +絆礼装 礼装名 レアリティ Cost HP ATK ☆4(SR) 9 100 100 効果 ベアトリーチェ(ライダー)装備時のみ、 +20の質問 質問1 真名と現界年齢と性別を教えてください 「」 質問2 身長と体重を教えてください 「」 質問3 出身地を教えてください 「」 質問4 好きな色、自分を象徴するような色はありますか 「」 質問5 特技はなんですか 「」 質問6 好きなものはなんですか 「」 質問7 嫌いなものはなんですか 「」 質問8 天敵とかいますか 「」 質問9 属性について教えてください 「」 質問10 現代での生活について自由に話してください 「」 質問11 貴方の宝具、乗騎、戦術について自由に話してください 「」 質問12 貴方の外見について自由に話してください 「」 質問13 ざっくりとあなたの性格を教えてください 「」 質問14 自分の日本での知名度をどう思いますか 「」 質問15 貴方の適合クラスを教えてください 「」 質問16 聖杯にかける望み、あるいは聖杯戦争参加の経緯を教えてください 「」 質問17 親しい人間について自由に話してください、空欄でも構いません 「」 質問18 自分のマスターをどう思いますか、空欄でも構いません 「」 質問19 理想のマスター像を教えてください。それに対して今のマスターは何点ですか 「」 質問20 なにかこちらに質問はありますか 「」 今回はありがとうございました。あなたの望みが叶うことを願います +セリフ集 ●サーヴァント名 一人称: 二人称: マスター: キーワード : : 召喚 「」 レベルアップ 「」 霊基再臨 「」 「」 「」 「」 戦闘セリフ 戦闘開始 「」 「」 スキル 「」 「」 カード 「」 「」 「」 宝具カード 「」 アタック 「」 「」 「」 EXアタック 「」 宝具 「」 ダメージ 「」 「」 戦闘不能 「」 「」 勝利 「」 「」 マイルーム会話 「」 「」 「」 「」 好きなこと 「」 嫌いなこと 「」 聖杯について 「」 絆Lv.1 「」 Lv.2 「」 Lv.3 「」 Lv.4 「」 Lv.5 「」 イベント 「」 誕生日 「」